個人事業を始めると、必ず向き合うことになるのが確定申告です。
その中でもよく耳にするのが「青色申告」ですが、
- 白色申告と何が違うのか
- 本当にそこまで手間をかける価値があるのか
- 自分にもできるのか
と迷っている方は多いと思います。
この記事では、税理士事務所での実務経験をもとに、
青色申告の仕組みからメリット・始め方までを、
これから事業を続けていく人の目線でわかりやすく解説します。
青色申告とはどんな制度か
青色申告とは、
一定のルールに従って帳簿をつけ、正しく申告する人に税制上のメリットを与える制度です。
もともと日本の所得税は、国が税額を決める「賦課課税方式」でした。
しかしそれでは、
- 実態を正確につかみにくい
- 不公平が生じやすい
という問題があり、戦後に**申告納税制度(確定申告制度)**へと切り替わりました。
ただ、制度が始まった当初は
- 帳簿が適当
- 申告漏れが多い
といった課題も多く、
「正直に申告する人ほど損をする」状況になりかけていました。
そこで導入されたのが、
きちんと帳簿をつける人を優遇する仕組み=青色申告制度です。
青色申告を使える人
青色申告を利用できるのは、主に次の人です。
- 個人事業主
- 不動産所得がある人
利用するには、あらかじめ
**「青色申告承認申請書」**を税務署へ提出する必要があります。
この申請をしていないと、どんなに帳簿をつけていても青色申告はできません。
青色申告のメリット
青色申告の魅力は、単なる節税にとどまりません。
お金の面と、事業管理の面の両方でプラスになる制度です。
1. 最大65万円の青色申告特別控除
条件を満たすと、所得から最大65万円を差し引けるのが最大のメリットです。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 10万円 | 簡易簿記での記帳 |
| 55万円 | 複式簿記+期限内申告+決算書の提出 |
| 65万円 | 55万円の条件+e-Tax申告(または電子帳簿保存) |
たとえば課税所得が300万円の場合、
65万円控除があれば実質235万円に対して課税されます。
この差は、所得税だけでなく住民税にも影響します。
2. 赤字を3年間繰り越せる
事業が赤字になった場合、その損失を翌年以降3年間繰り越せます。
開業して間もない頃は、
どうしても設備投資や準備費用で赤字になりがちです。
青色申告にしておけば、その赤字を将来の黒字と相殺できるため、
結果的に税金を抑えながら事業を軌道に乗せることができます。
3. 家族への給与を経費にできる
配偶者や家族に手伝ってもらっている場合、
一定の条件を満たせばその給与を
**「青色事業専従者給与」**として経費にできます。
ただし、
- 事前の届出が必要
- 金額は仕事の内容に見合った範囲であること
といったルールがあります。
節税だけを目的に無理な設定をすると、税務調査で否認されることもあるため注意が必要です。
青色申告の始め方
青色申告を始めるには、まず事前手続きが必要です。
手続きの流れ
- 青色申告承認申請書を入手
- 税務署へ提出(窓口・郵送・e-Tax)
- 承認後、その年の確定申告から青色申告が可能
※提出後、特に連絡がなければ承認されたと考えて問題ありません。
提出期限
| 状況 | 期限 |
|---|---|
| すでに事業をしている人 | その年の 3月15日まで |
| 新しく開業した人 | 開業から2か月以内 |
今後は電子申告が当たり前になる流れなので、
早めにe-Taxの利用者識別番号を取得しておくと後が楽です。
白色申告との違い
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前申請 | 必要 | 不要 |
| 帳簿の方法 | 原則 複式簿記 | 簡易でOK |
| 特別控除 | 最大65万円 | なし |
| 赤字の繰越 | 3年間可能 | 不可 |
| 家族給与の経費化 | 可能(条件あり) | 原則不可 |
白色申告は手続きが簡単ですが、
長く事業を続けるなら、税制面では圧倒的に青色申告が有利です。
まとめ
青色申告は、
最初は少し面倒に感じるかもしれません。
帳簿を整えたり、
申請書を出したり、
e-Taxの設定をしたりと、
やることは白色申告より確かに増えます。
それでも実務で多くの人を見てきて感じるのは、
青色申告にして後悔した人はほとんどいない
でも、白色のままでよかったと言う人もほとんどいない
という現実です。
控除の差は1年では小さく見えても、
5年、10年と積み重なると、はっきりとした差になります。
それに、帳簿をきちんとつけるようになると、
- どの仕事が利益を生んでいるのか
- 無駄な支出はどこか
- 来年はどれくらい税金がかかりそうか
こうしたことが自然と見えるようになります。
これは節税以上に、事業を続けていくうえでの大きな武器になります。
これから開業する方も、
すでに白色申告をしている方も、
ぜひこのタイミングで青色申告への切り替えを検討してみてください。
最初の一歩が、
これから先の事業をずっと楽にしてくれます。
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